研文選書【中国思想】
野村 浩一 著
(本書より)
近代日本の歴史をふ り返る時、たぶん私たちは日中関係の構造そのものが、わが国にもたらした本質的な思想的問題について、あらためていくつかの感慨を抱かされるにちがいな い。・・・わが国の中国侵略は、およそ「アジア」の一国という立場に立つ限り、近代日本に深く突きささった意識における棘であった。隣国中国の変革、進歩 に対する期待は、この現実の前に、「アジアの解放」の理念を媒介項として、ついには「日本の改造」へと行きついていく。戦前の日本において、いわば「アジ ア」の立場から、多少とも中国の変革にかかわろうとした人たちの中で、この回路をよく脱出しえた人物は―尾崎秀美のようにナショナリズムとインターナショ ナリズムのはざまへ向けて思い切った跳躍を試みた場合を除いては―ほとんど見当たらない。それは、近代の日中関係を強固に規定した一つの磁場であり、ある いはまた運命的な呪縛でもあった。
〈目次〉
近代日本における国民的使命観・その諸類型と特質―大隈重信・内村鑑三・北一輝
近代日本の中国認識―「大陸問題」のイメージと実態
「アジア」への航跡―宮崎滔天の思想と行動
橘樸―アジア主義の彷徨
4・6判 308頁 1981年4月発行 ISBN4-87636-017-0
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陳 淳著 佐藤 仁訳・解題
朱子の思想のあらましを知るのに、何か好い入門書はないものかと思案した結果、・・・朱子の高弟の一人である陳淳の『北渓字義』に思い当たった。これだと分量もそんなに多くはないし、内容的にも朱子学の思想構造を知るのに手頃な入門書である。
『北渓先生字義』は、朱熹の高弟の陳淳の講義を、陳淳の弟子の王雋が記録編集したものである。・・・宋代性理学の分野で頻繁に使用されている重要な術語、 とはいっても・・・当然のことながら、そのほとんどが古代の経書、なかんずく程朱が尊重した『四書』の中に出典があり、儒学の基本的な概念として、すでに 馴染み深いものばかりであるが、その中の特に重要なものを選び出し、宋代性理学者達が、それらにいかなる意味内容を付与したかを、思想史的な背景をも充分 に考慮しながら、詳細に解説し、それによって宋代性理学の理論構造を明確にしようとしたものである。従来から宋代性理学の入門書、あるいは概説書として多 数の人士に愛読され、過去七百年間にわたって、中国はもちろんのこと、朝鮮、日本においても各種の刊本が刊行されて来た。(本書p.239より)
4・6判 246頁 1996年3月発行 ISBN4-87636-134-7
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下見隆雄著
<目次>
Ⅰ 孝とはなにか
孝をどのように考察するか/老莱子孝行説話の真意/老莱子説話への近代人の理解/老子説話への対応の問題点/説話類に語られる孝とその実のすがた/割股に おける孝の本質/子の犠牲と孝との関連/孝子伝説話における割股的孝行の扱い/孝と現代への視点/古典が教える孝/孝と祖先の祭祀について/母性への観点 と祖霊
Ⅱ 孝と母性
子の孝と親の自愛/子に対する父と母の位置/子を導く父と母の役割と意義/慈母と厳母―歴代の教説に見る/母の教導の本質/報恩への観点/孝と報恩/孝と 恩の問題/儒教社会における子という存在/母親の母性行為をどうとらえるか/儒教社会における母性/儒教社会の倫理と母性
Ⅲ 孝から忠への展開―血縁の父母から公の父母へ
『論語』における仁/孝と社会道徳/『孟子』における孝の展開/『孟子』と『墨子』/『荀子』における孝と忠/『孝経』の場合/民の父母/私の孝から公の孝へ
Ⅳ 母・妻・娘における母性実践の諸相―伝記資料からみる
「二十四孝」における母/母の影響力と役割―列女伝記説話を中心に/子を教導する母と夫を教導する妻/夫の孝と妻の貞節/父への母性発揮
おわりに
儒教社会女性の深層/儒教社会の母性と日本社会/儒教思想への対応と今後の課題
4・6判 320ページ ISBN978-4-87636-148-9
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吉田 公平 著
我々が思索するときに日常的に用いることばで、儒教思想、とりわけ陽明学について、その歴史的な意味と今日的な意義を開かれた知の広場で共に考える試み。やさしく書かれた文章と講演筆記で構成。
〈目次より〉
東アジアにおける中江藤樹の位置
陽明学研究の今日的意義
夏目漱石と西田幾太郎―心は善か
陽明学が問いかけるもの
陸象山はなぜ主役になれなかったか
王龍渓について
王陽明の朱子学批判
石門心学と陽明学
性善説の社会的背景
北京日本学研究中心・一九九五
4・6判 234頁 2000年5月発行 ISBN4-87636-186-X
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小林 武 著
章炳麟の思想的成熟を、単に伝統の再生や反近代性といった 視角から捉えずに、西洋近代思想や明治思潮というグローバルな知的環境が介在して、はじめ て可能であったことを論証。章炳麟の思想的軌跡が、西洋近代や明治日本とは異なる、もう一つの近代の形を示していることを解明する。
〈目次〉
序章 閉じられた世界から開かれた世界へ
中華意識の変容/日本への知的接近
第一章 章炳麟と明治思潮―西洋近代思想への接近
西洋近代思想への接近/西洋近代思想の陰翳/宗教学者姉崎正治との思想的関係
第二章 『民報』期の章炳麟と明治思潮―西洋近代思想からの転回
明治の厭世観と章炳麟/「自主」の思想―自利か利他か/『道徳大原論』と共同感情論
第三章 章炳麟『斉物論釈』の哲学―西洋近代思想との対抗
考証学から哲学へ/本体とは何か―迷いと悟りと/『斉物論釈』―自他融合の哲学と解釈学/終わりに―もう一つの近代
4・6判 228頁 2006年11月発行 ISBN4-87636-266-1
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野間 文史 著
『左伝』の全体像を解析し、更に特徴的な部分を読み解くことでその成立ちと著作意図を考察する。
〈目次〉
第一章 左伝研究序説
第二章 左伝の多元世界 大部な『左伝』/列国の史記/国別『左伝』の復元/『左伝』の重層性/『左伝』の重心
第三章 覇者の時代(一)普文公 普文公登場前夜(一)曲沃伯/普文公登場前夜(二)献公・驪姫・大子申生・恵公/公子重耳放浪譚/晋文公の覇業と『左伝』の評価
第四章 覇者の時代(二)斉桓公 斉桓公登場前夜/斉桓公の覇業と『左伝』の評価/斉桓公の最後/『左伝』の管仲評価
第五章 大戦の時代―ひつ之役
第六章 賢大夫の時代(一)鄭の子産 弭兵之会/鄭の子産(鄭の七穆/外交辞令/批評・予言/為政/博学多識/同事異聞/子産説話)
第七章 賢大夫の時代(二)叔向・晏嬰・叔孫豹・公子札 晋の叔公(批評・予言/子産・晏嬰との出会い)/斉の晏嬰(社稷の臣/晏嬰と陳氏)/魯の叔孫豹/呉の公子札/賢大夫の時代
第八章 結びと参考文献
4・6判 424頁
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吉田 公平著
中国古典、とくに陽明学を芳醇な滋味に発酵させ、そのエッセンスを平明な文章で、現代に生きる思想として伝える。
<目次>
Ⅰ |
教養としての陽明学 |
Ⅱ |
「心火」を癒す |
Ⅲ |
共生社会に生きる |
Ⅳ |
資源としての中国哲学 |
46判 282頁 2013年4月5日発行 ISBN:9784876363612
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