中国史【社会学】
小林一美著
ヴェーバーへの深い洞察を基に、その視点に立って、古代から現代にいたる“中国史”に固有な諸問題に新しい照射を行なうポレミックな書。著者渾身の書下ろし雄篇。
〈目次〉
第一章 総論 ヴェーバーの中国歴史社会論と中国史研究
ヴェー バー『儒教と道教』の中国歴史社会論/日本のヴェーバー研究者の多くの成果/中国倫理思想史を「戦士・勇者・武人」と「司祭・文人・儒生官 僚」との対抗倫理連関で考察/中国古代史に「戦士・勇者・武人的倫理」類型を発掘/帝国前期(秦・漢代~隋・唐代)の二つの倫理類型の対抗関係/帝国後期 (宋代~清代)の二つの倫理類型の対抗関係/「富貴・官界への道」から「市隠・芸文の道」への突破/水滸伝・義和団式の英雄好漢が象徴する暴力と呪術の世 界/西洋との衝突と中国近代の意味/中国における共産党勝利の歴史的条件と意味/ヴェーバーの中国家産官僚制論の射程
第二章 中国古典古代の戦士たち―『春秋左氏伝』の世界
春 秋時代、戦士・勇者が活躍した時代/濃密な国際的人事交流/春秋時代は都市国家が発展・併存した時代/「士」階級の解体とその後の行方/春秋時代 の階級配置/辺境の戎・狄と中華の国々との関係/諸子百家の「自由な世界」、その時代的位置と意味/戦闘形態の変化と戦士と軍神の行方
第三章 孔子と子路―中国倫理史上の岐路、「聖人君子」の道と「戦国武人」の道
孔子と子路が象徴する二つの倫理的対抗連関/司馬遷の『史記』「仲尼弟子列伝」における子路/「戦士武人エートス」を象徴する子路/戦闘的政治家としての孔子/孔子の亡命生活/子路、衛国における義勇の死/結論、中華帝国における二つの倫理的対抗
第四章 『史記』にみる家産官僚制下の戦士、戦略家、将軍の運命
戦国時代の「戦略戦術家」から秦漢帝国の「家産官僚的将軍」へ/中国古典古代の勇猛な戦士たち/文人官僚制の勝利と戦士武人エートスの敗北/ヴェーバーの家産官僚制国家としての秦漢帝国/中国文化・文明の形式の完成
第五章 増淵龍夫の中国古代史研究とマックス・ヴェーバー―増淵龍夫『中国古代の社会と国家』を読む
増淵の問題意識/任侠的な人的結合原理とその変遷/増淵のヴェーバー批判と中国革命への期待/ヴェーバーの「理念型」と増淵の誤解/游侠・任侠的世界の行方/中国の游侠と日本の野武士の比較
第六章 魏晋南北朝時代の諸勢力、諸階層の倫理類型
顔之推『顔氏家訓』、慧皎『高僧伝』にみる倫理類型
『顔氏家訓』にみる北方民族/儒教の世俗的な合理主義と倫理主義/儒教と仏教の両思想の文化比較/北方民族と漢人貴族の文化的対抗関係/仏教布教、仏典探索に命を賭す戦士的僧侶たち/三つの倫理類型の対立と融合/南北朝時代における貴族的倫理の歴史的位置
川勝義雄『魏晋南北朝』にみる倫理類型
「皇帝教皇主義」と「家父長的家産制」の間/北方騎馬軍団の侵入と南朝の文人貴族/北方胡族国家の「宗室的軍事封建制」の検討/難民、流民、遊民、無頼の恒常的発生と仏教信仰/農業文明と遊牧狩猟文明の対抗
第七章 唐代以降の科挙官僚制と官僚、読書人、民衆の精神世界
ヴェーバーの中国家産官僚制論/科挙官僚制下における文人・読書人・官僚の世界/宋代、科挙官僚制の全面的展開/明末清初の江南における官僚、郷紳及び民衆社会/科挙官僚制下における郷紳・文人・都市民衆の世界
第八章 儒教倫理とキリスト教倫理
ジャック・ジョルネ『中国とキリスト教』を読む
中国の思想・倫理とキリスト教/『論語』と『新約聖書』の価値観の対立/『論語』再考
余英時「中国近世の禁欲的商人倫理」論の検討
余英時の中国宗教・思想論とヴェーバー批判/「中国宗教の世俗内的転回」の検討/「儒家倫理の新発展」の検討/「中国商人の精神」の検討/余英時のヴェーバー批判と私の余英時批判
第九章 ヴェーバーの中国近代社会論―太平天国、仇教運動、義和団、辛亥革命、農民ボルシェヴィズム
旧中国の呪術的民衆世界/大変天国に関するヴェーバーの視点/太平天国から義和団への逆転過程/辛亥革命指導者たちとキリスト教/中国の「農民ボルシェヴィズム」論
第十章 中国現代史における毛沢東勝利の意味―階級闘争・抗日救国闘争の預言者、英雄戦士倫理の復活者、民衆運動史の中の真命天子の再臨として
英雄戦士としての毛沢東/毛沢東の『体育の研究』の分析/毛沢東の「戦士的エートス」と心身の鍛錬/「革命戦士」への道/「湖南農民運動考察報告」における農民運動と民衆暴力/毛沢東の施回点
A5判 486頁 2012年6月発行 ISBN978-4-87636-341-4
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Daniel.L.Overmyer(オーバーマイヤー )著/林原 文子 監訳
漢代~二十世紀の民間教派を広大なスケールで考究した名著“Folk Buddhist Religion”の全訳。
中国教派独自の存在意義を証明するため、従来の見方を導く結果になった官僚や学者が作成した報告書の類を越えて、Overmyer氏は史料を猟渉し、「ばらばらなデータを社会的脈絡・背景・時代を関連づけながら理解」しようとしている。その研究方向は、まさに中国民間教派の研究に新たな視野を開拓するものとなった。(「訳者あとがき」より)
Overmyerのこの著書は、綿密な中国研究と、社会科学の文献に対する堅実かつ高度の理解が見事に組み合わさった成果である。氏は中国後期宗教史上の豊饒なる運動を巧みに検証し、将来この分野の研究者にとって軽視しえない、重要で取り組み甲斐のある多くの問題点を提起した。(于君方氏評)
〈目次〉
序説 論点と視角
事例研究 長生教
学説史 反乱者か、布教師か、それともその両方か
比較文化的視点
白蓮教概史
他の集団 白雲宗と羅教
民間仏教の様式 指導者体制、経典、儀礼
結論
訳者あとがき(林原文子)
監修者あとがき(伊東道治)
A5判 340頁 2005年1月発行 ISBN4-87636-243-2
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