韓愈詩訳注

韓愈詩訳注 第一冊

川合康三・緑川英樹・好川聡編

韓愈の詩の全作品について解題、校勘、訳、注を施す。銭仲聯『韓昌黎詩繋年集釈』に従って配列し、本冊にはその巻一、巻二を収める。 全五冊 第1回配本。

 

韓 愈というと、散文家としての面がまず想起される。日本では『唐宋八家文』、『文章規範』に収められた作者として、そして中国では何より古文復興を唱え、宋 以後の標準的な散文を導いた先駆者として、散文の領域における韓愈の貢献はいまさら言うまでもない。中唐の文人が一般的にそうであるように、韓愈は詩も文 もひとしく作っているのだが、文に比べると、詩の方はあまり目立たない。・・・なるほど黄庭堅が言うように、またそれを引く陳師道も同調したであろうよう に、韓愈の詩は盛唐詩の達成した詩的成就、定型的な抒情から、はずれている。しかし基準にこだわらず柔軟に読みなおしてみれば、一言でいって韓愈の詩は、 おもしろい。躍動している。古の道を説く道学者とは似てもつかない、人間臭さが満ち溢れている。それは白居易が安定した世界を描出すること、その世界に安 住することを求めたのとは、対極に位置する。何が起きるかわからない危うさ、あれこれ思いあぐねる小心さ、そんないじましさを自嘲するおかしさ。白居易の 特質を安定感とすれば、韓愈の詩の魅力は逆に座りの悪さにあると言えるだろう。そこに人間味に富んだ戸惑い、しくじりが生まれ、巧まざる諧謔が伴う。こう した韓愈の特質は、これまでさほど注意されなかったと思う。文のみならず詩においても韓愈はもっと読まれるべきだというのが、本書を編むゆえんであ る。・・・わたしたちが心がけたのは、単なる日本語への置き換えに終わらず、文学作品としての面貌を捉え、伝えることである。詩を構成する語、句はそれぞ れどのようなふくらみをもつのか、文脈の中でいかなる役割を果たしているのか。また一篇の詩は韓愈の文学のなかで、あるいは文学史のなかでいかに位置づけ られるのか。こうした目標を掲げながらも、実際にはそこに到達するのは容易でないが、少なくともそれを意識することで、いくらか前に進むことができればと 願う。(本書「はじめに」より)

 

編者

川合康三/緑川英樹/好川聡

執筆者

愛甲弘志/浅見洋二/伊﨑孝幸/稲垣裕史/乾源俊/齋藤茂/鈴木達明/谷口高志/谷口匡/中木愛/二宮美那子

 

はじめに(川合康三)

韓愈集版本・注釈概説(緑川英樹)

韓愈年譜 大暦三~永貞元年(齋藤茂)

関係地図(鈴木達明)

A5判函入 514頁 2015年4月発行 ISBN978-4-87636-396-4

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